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2026.07.20|

チームサポート

ピッチに戻った選手の姿から学んだこと

代表の金成です。
先日のチームサポートでのコラムになります。●●選手の笑顔●●

長期間リハビリに取り組んできた選手が公式戦に復帰しました。
その選手が、心から楽しそうにプレーしている。
その姿を見たとき、胸が熱くなりました。
チームトレーニングへ完全復帰したのは、試合のわずか3日前。合流後の状態が非常に良く、相談の結果その週の公式戦で復帰することになりました。
そして迎えた試合では、復帰直後とは思えないほどの活躍を見せ、チームの勝利にも大きく貢献してくれました。
試合後、本人から、
「本当にありがとうございました!」
と声をかけてもらいました。
コーチからも、
「いや〜、ありがとう!本当に良かった。おめでとう!」
さらに、ほかの選手からも、
「マジで、今日の〇〇選手、効いている!」
という声が聞こえてきました。
実際にピッチで結果を出したのは、もちろん選手本人です。
それでも、長いリハビリ期間をともに歩んできた者として、目の前で選手が躍動し、チームの勝利に少しでも貢献できたことに、スポーツ現場に関わる大きな醍醐味を感じました。
●●「本当に戻れるのだろうか」という不安●●
ここに至るまで、決して順調ではありませんでした。
思うように回復が進まない時期もあり、本人も「本当に戻れるのだろうか」と悩んでいたと思います。担当していた私自身も、同じように悩みながら進んできました。
長期離脱からの復帰は、単に痛みがなくなり、筋力が回復すればよいわけではありません。
走る、方向転換をする、ボールを扱う、対人プレーに入る、チームトレーニングに合流する。そして、公式戦の強度と緊張感のなかでプレーする。
一口に「復帰」といっても、その間にはいくつもの段階があります。
なかでも難しいのが、
「部分合流をどこまで行わせるのか」
「いつから完全合流させるのか」
「いつ試合へ復帰させるのか」
という判断です。
早すぎれば、症状の再燃や再受傷のリスクが高まります。一方で、慎重になりすぎれば、実戦感覚を取り戻す機会を遅らせ、選手の不安を強めてしまう可能性もあります。
安全を守りながら、挑戦する機会をつくる。
そのバランスが求められます。
エラーを減らすために考え続ける
私自身、できる限り判断のエラーを減らすために、毎日の選手の状態を確認します。
痛みやハリ感だけでなく、動作の質、トレーニング後の反応、疲労、表情、言葉、プレーへの恐怖感など、さまざまな情報を集めます。
さらに、解剖学、生理学、整形外科学、運動学、心理学などの知識を見直し、関連するエビデンスを調べました。担当する理学療法士やチームのメディカルスタッフとも、繰り返し意見交換を行います。
ただし、エビデンスに示された基準を満たせば、すべての選手が同じように復帰できるわけではありません。
ポジション、プレースタイル、身体的特徴、心理状態、試合日程などは、一人ひとり異なります。
だからこそ、
「この選手にとって、今、何が最善なのか」
を考え続ける必要があります。
長期離脱選手の復帰支援とは、決められたプログラムをこなすことではなく、不確実な状況のなかで、その時点での最善解を探し続ける仕事なのだと思います。
●●復帰は、ひとりではつくれない●●
今回の復帰は、決して誰かひとりの力で実現したものではありません。
医療機関での定期的なDrの診断、PTのリハビリ、チームメディカルスタッフによる評価と調整、リハビリ、監督コーチによる練習強度や起用の判断。そして何より、選手本人の地道な努力。
それぞれの専門性と役割がつながったことで、公式戦早期復帰にたどり着いたのだと思います。
立場によって、見ているものは異なります。
医療者は組織の治癒や身体機能を考え、トレーナーは身体機能と競技動作やトレーニング負荷を見ます。監督コーチはチーム戦術や選手起用を考え、選手本人には「試合に出たい」という強い思いがあります。
大切なのは、それぞれの視点を持ち寄り、
「選手が安心して競技へ戻り、その後も継続して力を発揮する」
という共通の目的に向かって判断することだと思います。
●●リハビリテーションとビジネスの共通点●●
今回の経験を振り返ると、選手の復帰支援は、ビジネスや組織マネジメントにも通じる部分が多いと感じます。
1.多職種連携と部門間連携
スポーツ現場では、選手、コーチ、病院、理学療法士、アスレティックトレーナーなど、異なる立場の人が関わります。
これは、ビジネスにおける営業、企画、現場、管理部門、経営層などの部門間連携と同じなのかと思います。
それぞれが専門的に正しいことを言っていても、情報がつながらなければ、組織全体として最善の判断ができるとは限りません。
「誰が正しいか」ではなく、
「目的を達成するために、必要な情報をどうつなぐか」
が重要になります。
2.段階的リハビリとPDCA・OODA
リハビリでは、計画を立て、実行し、身体の反応を確認して修正します。これは、ビジネスにおけるPDCAとよく似ています。
しかし、現場では毎日状況が変化します。そのような場面では、観察し、状況を整理し、判断して行動するOODAの考え方も必要です。
長期的にはPDCAで方向性を管理し、日々の変化にはOODAで対応する。
・Observe:状態や環境を観察する
・Orient:得られた情報を整理し、状況を判断する
・Decide:次の行動を決める
・Act:実行する
変化の激しいビジネス環境にも、同じことがいえるのではないでしょうか。
3.専門技術とマネジメント
身体を適切に評価し、必要な徒手療法や運動療法を選び、負荷を設定する。こうした専門技術が、復帰の土台になります。
ビジネスでも、コミュニケーションやリーダーシップだけでは成果は生まれません。営業、企画、財務、教育など、それぞれの専門技術が必要です。
専門技術とマネジメントは、どちらか一方ではなく、成果を生み出すための両輪です。
4.復帰時期の調整と合意形成
選手は早く試合に出たい。
コーチは戦力として起用したい。
メディカルスタッフは再受傷を防ぎたい。
それぞれの考えは、どれも間違いではありません。
必要なのは、「出られるか、出られないか」という二択ではなく、出場時間や参加範囲、注意すべき反応などの条件を具体的に整理することです。
ゼロリスクを求めれば挑戦できません。しかし、勢いだけで進めれば大きな問題につながります。
リスクを共有し、許容できる範囲を探りながら前へ進む。これは、ビジネスにおける交渉や合意形成にも共通しています。
5.選手教育と人材育成
リハビリでは、メニューを与えるだけでは十分ではありません。
なぜこの運動が必要なのか。今はどの段階にいるのか。何に注意すべきなのか。
選手自身が理解し、行動できるように伝える必要があります。
リハビリのゴールは、担当者がいなければ何もできない選手をつくることではありません。選手自身が考え、自分の身体を管理できる状態をつくることです。
これは、組織における人材育成にも通じる考え方です。
支える仕事の成果とは
トレーナーや理学療法士は、試合の主役ではありません。
ピッチでプレーし、結果を出すのは選手です。
しかし、その選手が力を発揮するまでには、多くの人の支えがあります。
自分が目立つことではなく、関わった人が自分らしく力を発揮すること。そして、その活躍がチームの成果につながること。
それが、支える仕事の価値なのだと思います。
これは、経営者や管理職、教育者にも共通すると思います。
良いマネジメントとは、リーダー自身が成果を独占することではなく、関わる人たちが力を発揮できる環境を整え、その成長や活躍を心から喜ぶことではないでしょうか。
もちろん、公式戦に復帰できたからといって、すべてが終わったわけではありません。
復帰はゴールではなく、新しいスタートです。
これからも身体の反応を確認し、負荷を調整しながら、再受傷を防ぎ、さらにパフォーマンスを高めていく必要があります。
長い期間を乗り越え、ピッチで楽しそうにプレーする選手の姿を見られたこと。
そして、その瞬間に立ち会えたこと。
この仕事を続けてきて、本当に良かったと思える瞬間でした。

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